姿勢と膝痛の関係
膝痛に悩んでいる方は少なくありませんが、その原因が意外な場所にあることをご存じでしょうか。実は、日常的な姿勢が膝に大きな影響を与えていることが多いのです。正しい姿勢を保つことは、身体全体のバランスを整えるだけでなく、膝にかかる負担を軽減するためにも非常に重要です。この記事では、姿勢と膝痛の関係について詳しく解説し、予防するためのポイントを紹介していきます。
目次
膝痛とは
膝痛は、多くの人が経験する症状であり、年齢やライフスタイルに関わらず発生する可能性があります。その原因は多岐にわたり、大きく分けて「外傷性」と「慢性的なもの」の2つに分類されます。
1. 外傷性の膝痛
スポーツや転倒などの外傷が原因で起こる膝痛です。靭帯損傷・半月板損傷、または骨折などが含まれます。急激な痛みとともに腫れや可動域の制限が見られることが一般的です。
2.慢性的な膝痛
繰り返しの負荷や加齢に伴う変化が原因で発生する膝痛です。代表的な例として、変形性膝関節症(OA)が挙げられます。このタイプの膝痛は、軟骨のすり減りや関節の炎症によって痛みが生じるため、徐々に進行することが特徴です。また、姿勢の悪さや筋力バランスの乱れも慢性的な膝痛の一因となることがあります。
姿勢と膝痛の関係
膝はスネの上(約2~3㎠)に大腿骨が乗っている不安定な組織です。そのため、靭帯や筋肉であらゆる方向の動きに対応できる構造となっていますが、上半身や足首からの動きの影響を受けやすく、姿勢の変化によって膝関節への負荷のかかり方も変化しやすくなっております。
1.姿勢チェック 膝の荷重線
理想的な姿勢(綺麗な姿勢)は、耳から床へのまっすぐ下した荷重線が肩、大転子、膝関節の前方、外くるぶしを通過すると言われております。
膝だけに着目すると、この荷重線は膝関節の前方1/3部分(膝蓋骨の後面)を通過すると言われております。
姿勢と膝痛の関係を理解するには、姿勢の変化によって、この荷重線が膝のどこを通っているかを知ることが重要になります。
2.膝の荷重線 【反り腰の場合】
反り腰の場合、耳から床への荷重線は膝の前方を通過するため、膝には伸び過ぎる方向に力が加わります。そのため、膝関節の前面には圧縮ストレス(圧縮されるような力)、後方には伸張ストレス(伸ばされるような力)が生じます。この状態が続くと、日常生活では膝の裏のくぼみ部分が痛くなりやすかったり、膝の前部分に詰まったような痛みが生じることがあります。さらに、このような姿勢で激しい運動を繰り返しおこなうと半月板損傷やACL損傷などのスポーツ外傷も生じやすくなります。
3.膝の荷重線 【円背の場合】
円背=背中が丸くなるような姿勢では、荷重線が膝の後方へ変位するため、膝は曲がる方向へ力が加わります。その結果、膝の前面には伸張ストレス、後面には圧縮ストレスが生じます。日常生活場面では、太ももの前面が張りやすくなったり、膝裏に重だるい痛みが生じたりすることがあります。また、膝関節は曲がった状態では、膝の側方の靭帯が緩んだ状態になりますので、脛骨(スネ)に力学的ストレス(伸張・圧縮)が生じやすくなり、骨棘が形成され変形性膝関節症の要因になることもあります。
スポーツ場面でも、背中が丸まった状態では膝が曲がりやすくなるため、膝前方の脛骨粗面や膝蓋骨・膝蓋靭帯が引っ張られる力が増加し、オスグットシュラッター病やジャンパー膝(膝蓋腱炎)を生じやすくなることもあります。
これらの姿勢不良に伴う膝への力学的ストレスは一時的であれば、特に問題ないですが、習慣的な状態になると不調を生じやすくなりやすくなるため、膝痛には姿勢管理も重要になります。
膝痛を予防するポイント
では、具体的にどのように姿勢不良に伴う膝痛を予防していくのかを紹介します。
1.姿勢チェック
まずはご自身の姿勢がどのようになっているのかを理解するために、姿勢をチェックすることが大切になります。
横から見ると①脊柱(背骨)の弯曲具合、②骨盤の位置・傾き、③頭の位置などがポイントになりますが、具体的には、頭部が真っ直ぐ正面を向き、耳・肩・腰・膝・足首が一直線に並ぶことが理想的な姿勢と言われております。
壁などに後頭部・背中(肩甲骨)・お尻をつけてチェックする方法もあります。その際は、腰と壁の隙間に手の平が入る程度がいい姿勢となります。こぶしが入る場合は反り腰傾向、肩甲骨や後頭部が壁から離れ、背中に隙間がない場合は円背傾向となります。
2.体幹トレーニング
姿勢をチェックしご自分の傾向を知することで、姿勢に合わせたトレーニングを実施することが可能となります。
例えば、反り腰の場合は腰を丸めるようなエクサイズが大切になりますし、円背の場合は腰を反るようなエクサイズが重要になります。
また、直立位や動いている場面でも姿勢を綺麗に保持できるようなトレーニングが必要になります。
プランク
バードドッグ(ダイアゴナル)
キャットキャメル(キャットカウ)
3.骨盤トレーニング
体幹の可動性や安定性が備わっていても、立位では股関節の状態や骨盤の傾斜も膝にとっては重要な影響因子となります。
そのため、骨盤の前後傾運動にて股関節可動域や股関節・下腹部の筋肉を整える必要があります。
座って簡単にできる運動になりますが、ポイントはゆっくりと呼吸を意識しながら行うことが重要になります。
骨盤を後ろに倒す(後傾運動)
骨盤を起こす(前傾運動)
まとめ
今回は姿勢と膝痛の関係について、姿勢チェックのポイントやエクサイズを紹介しました。膝痛には様々な原因があり、一概に「姿勢が悪いから膝が痛くなる」といった傾向ばかりではありません。もちろん姿勢が良くても膝の動きが悪くて膝が痛い場合もあります。
今回の紹介させていただいた内容は、「膝痛を治す目的」ではなく、「膝痛を予防するために姿勢を意識する」という感覚で理解いただけると幸いです。
なお、膝痛に関する膝の情報に関しては、今後ブログでも投稿していく予定ですので、お楽しみにお待ちいただけると幸いです!